契約書は「サインして終わり」ではなく、トラブルを未然に止めるための防波堤です。
特に外注・業務委託・清掃/制作/広告運用・システム開発・コンサル・ファクタリング等、“サービス提供型”の取引では、口約束のズレがそのまま損失になります。
この記事では、契約書で最低限確認すべき条項を、費用・解除・違約金を中心に、実務で使えるチェックリストとしてまとめます。
※本記事は一般的な情報提供です。個別案件の判断は、弁護士・専門家へご相談ください。

契約書で一番大事なのは「合計いくら」「いつでもやめられるか」「やめたらいくら払うか」
多くの揉め事はこの3点に集約されます。
- 費用(総額・内訳・支払条件)が曖昧
- 解除(やめ方・通知期限・精算)が片側だけ有利
- 違約金(ペナルティ・損害賠償)が過大 or 条件不明
この3つを押さえるだけで、危ない契約の8割は回避できます。
最初に確認する“基本情報”5つ
条項を見る前に、ここが抜けている契約書は危険です。
- 契約当事者の特定(会社名・住所・代表者名・押印/署名)
- 契約の目的(何のための契約か)
- 業務範囲(スコープ)(何をする/何をしない)
- 契約期間(開始日・終了日・更新条件)
- 優先順位(契約書と発注書・見積書・仕様書の優先関係)
「仕様は別紙」「見積は別」と書いてあるのに、その別紙が存在しないケースがよくあります。
“別紙が揃ってからサイン”が鉄則です。
【費用】条項チェックリスト(最重要)
1)費用の“総額”は明記されているか
「月額○円」「○%」だけで、最終的にいくらか分からない契約は危険です。
確認ポイント
- 月額・成果報酬・従量課金なら上限(キャップ)があるか
- 追加費用が出る条件が具体的か(例:修正回数、追加作業の定義)
2)内訳は分かれているか(初期費用・運用費・オプション)
よくある落とし穴
- 「初期費用」に実は設定代+デザイン代+管理費が含まれている
- 「運用費」にレポート費・保守費・サーバー費が混ざっている
- “無料”と言っていた機能がオプション扱い
契約書や見積書で内訳が固定されているか見ましょう。
3)支払条件(タイミング・方法・遅延損害金)
- 支払日:月末締め翌月末、納品後○日など
- 支払方法:振込(振込手数料負担者の記載)
- 遅延時:遅延損害金の利率(年○%)が過大でないか
「請求が来てないから払わない」は通りにくいこともあるので、請求書の発行条件も明確だと安心です。
4)検収(納品の合格基準)が書かれているか
制作・開発・納品系で超重要です。
- 納品物の定義(ファイル、URL、成果物一覧)
- 検収期間(納品後○日以内に確認)
- 検収がない場合の扱い(期間経過で自動承認など)
検収が曖昧だと、永遠に「未完成」扱いにされる、逆に勝手に完了扱いにされる、両方のリスクがあります。
5)追加作業の取り扱い(変更管理)
“スコープ追加”が揉めやすいので、以下があると安全です。
- 追加は書面合意(メール可)が必要
- 追加費用は見積提示してから実施
- 緊急対応の単価(時間単価など)
【解除】条項チェックリスト(いつ・どうやめられるか)
1)中途解約が可能か(任意解除)
理想は、双方に「○日前通知で解除可能」がある形です。
- 通知期限:30日前、60日前など
- 通知方法:書面/メール/内容証明など
- 解約日:月末固定か、通知から起算か
「途中解約不可」や「1年縛り+自動更新」は、事業者側の都合が強い可能性があります。
2)解約時の精算(支払い義務がどこまで残るか)
ここが一番揉めます。
- 既に着手した分はどう計算する?(出来高/日割り/一括)
- 前払い分の返金ルールは?
- 月額契約なら、解約月の扱い(満額/日割り)
特に「残期間の料金を一括請求」などは、実質的に違約金と同じです。条件が妥当か確認しましょう。
3)解除事由(重大な違反があったとき)
「相手がやらかした時に切れる」条項です。
- 支払遅延が何日続いたら解除できるか
- 反社条項、信用毀損、秘密漏えい
- 重大な契約違反の定義
一方だけが解除できる形(片務的)だと危険です。
4)データ・成果物の引き渡し(解約後に困るポイント)
Web/広告/システム/運用の契約で特に重要。
- アカウント(広告、SNS、解析、サーバー)の名義は誰か
- 解約後にデータを渡す義務があるか
- 移管作業の範囲と費用(引き継ぎ○時間まで無料等)
「アカウントは当社管理」「解約後はログイン不可」だと、資産が消えます。名義・権限・移管を必ず確認。
【違約金・損害賠償】条項チェックリスト(高額請求を防ぐ)
1)違約金が“定額”か“算定式”か
違約金(ペナルティ)の条項がある場合は、「何をしたら発生?(例:途中解約、支払遅延、秘密漏えい)」「いくら?(定額 or ○ヶ月分など)」「上限は?(キャップ)」「当社の損害を賠償」だけで金額不明だと、争いになりやすいです。
2)損害賠償の範囲(直接損害のみ/逸失利益まで?)
危険度が上がる文言
- 「間接損害、特別損害、逸失利益も含む」
- 「弁護士費用も含む」
- 「上限なし」
一般的には、賠償範囲を直接かつ通常の損害に限定し、さらに賠償上限(例:支払済み金額まで)を設定するのが安全寄りです。
3)免責条項(相手が責任を負わない範囲)
「当社は一切責任を負わない」系は要注意。
- 免責が広すぎる(故意・重過失まで免責)
- 納期遅延や品質不良でも免責になっている
- 再委託先の責任まで免責
免責が強すぎると、お金だけ払って成果が出ない契約になります。
まだある重要条項(見落としがちな地雷)
1)自動更新条項
「解約しないと自動で更新」「解約申し出の期限が“更新日の60日前まで”」など厳しい更新の仕組みと締切日は、カレンダーに入れて管理必須です。
2)再委託・下請け条項
- 再委託を自由にできるか
- 再委託先の監督責任は誰が負うか
品質や情報管理に直結します。
3)秘密保持(NDA)と個人情報
- 秘密情報の定義が広すぎないか
- 返却・削除義務があるか
- 個人情報の取扱い(目的、委託先、事故時の連絡)
4)管轄裁判所・準拠法
遠方の裁判所が管轄だと、争うだけで負担になります。可能なら自社側に寄せる、または中立に。
5)反社条項
ほぼ必須。ない場合は相手のガバナンスが弱い可能性もあります。
まとめ|サイン前に“費用・解除・違約金”だけは赤ペンで潰す
契約書は難しく見えますが、重要なのはシンプルです。
- 費用:合計いくら、何が追加になる?
- 解除:いつでもやめられる?やめたらどう精算?
- 違約金:何をしたら、いくら、上限は?
この3点を契約書の条項で確認し、曖昧なら修正依頼。
それができない相手とは、契約しないのが最もコスパの良い防御です。
